大切な人と食べるごはんは、なぜおいしいの?
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毎日のごはんって、家族みんなで食卓を囲んで、今日あったことを話しながら
あるいは仲間や同僚とワイワイ騒ぎながら食べるほうが、
1人で食べるよりずっとずっとおいしい。
いつもと変わらないごはんなのに、なぜ大切な人たちと食べるとおいしく感じるの?
今は家や学校があるから、みんなで一緒にごはんを食べられるけど
家や学校がなかった時代の人たちは、1人でごはんを食べていたのかな?
いつから人は、人と一緒にごはんを食べるようになったのだろう?
その疑問を解決するために、ごはんが大好きなソラミドごはんくんが、人の心の動きや行動を、生物学的な実験によって研究する名古屋大学の川合伸幸先生にお話を伺いました。川合先生は、「人の声を聞きながら食べると、一人での食事もおいしく感じる」といった研究結果も発表されています。お話を聞いてみると、人の食習慣と歴史との関係、みんなで食事をすることと一人でごはんを食べることの心理面や味覚面での違いについてなど、今の暮らしを見直すきっかけにもなる話が満載でした。
川合伸幸先生
名古屋大学情報学研究科 教授
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所・客員研究員/文部科学省科学技術・学術政策研究所 科学技術動向研究センター:専門調査委員/中部大学創発学術院 客員教授
比較認知科学、認知科学、実験心理学や生物心理学、生理心理学、神経科学を研究。ヒトと動物の行動を比較し、怒ったときや怖いと感じるときなどの心の動きを脳波や血圧、心拍などの生理反応を用いて研究している。
ソラミドごはんくん
ごはんが大好き!
ちょっぴりヒツジに似たごはんの妖精。好奇心旺盛で、ごはんのことなら何でも知りたい!聞きたい!見てみたい!と思っている。
集団で暮らし、集団で食べる!600万年以上前から続く“みんなでごはん”
人類は600万年以上もの昔から、1人でごはんを食べることはほとんどなかったと考えられています。それは、人類が集団で暮らす生き物であることと深い結びつきがあります。大昔の人たちは、子育て中の母親や子ども以外はみんなで狩りに行き、獲ってきたものを家族や仲間みんなで分け合って食べていた。その頃から人と食事をする習慣がずっと続いています。
ちなみに人類は最初、植物や果物のほかに、自分で仕留めた動物の肉ではなく、他の動物が食べ残した残骸の骨髄を石器で割って髄液を食べていたと考えられています。その後、今から約100万年前、自分たちで狩りができるようになると、脳が発達して火をおこせるようになった。その火を囲んで人が集まり、肉や野菜を調理し、やがては米を炊いて食べるようになったのです。
600万年以上も前から、みんなで一緒にごはんを食べていたんですね!昔は火おこしも大変だっただろうなあ……。ガスが使えるようになってからは便利になって1人ごはんが増えたのでしょうか?
ガスは18世紀半ばに起こった産業革命によって、世界的なエネルギー変革がもたらされ、一般に普及するようになりました。とはいえ日本でガスが普及するのは明治以降のこと。それまでは、やっぱり火をおこすのは大変だったことから、食事の時間を合わせてみんなで一緒にごはんを食べることが多かったと思います。
人の話し声がそばにあれば、1人ごはんでもおいしく感じられる
人と一緒にごはんを食べることは楽しいけれど、他にもいいことはあるのでしょうか?
一番は、「人と人との距離が近くなる」ことかな。例えば地域の祭りや神事では、行事が終わった後にみんなでごはんを食べることで結束力がより一層高まります。またある消防団を対象にした実験では、いつもみんなと一緒にごはんを食べている人のグループのほうが、1人で食べる人のグループより成績がいいという結果が出ているんですよ。
そうなんですか!みんなで食べることが直接いい成績につながるんですね!
そうなんですよ。宇宙飛行士も、宇宙ステーションの中ではそれぞれの仕事がとても忙しいけれどみんなで一緒にごはんを食べることで連帯感が強まり、各々の作業効率もアップするようです。
このように、自分1人で行うより他の人と一緒に活動するほうがその達成効果が増えることを「社会的促進」といいます。食事の場面においても、みんなと一緒に食べる、すなわち他の人と同じ行動をすることで、食事の摂取量が増えます。これを「食の社会的促進」といいます。鶏の飼育を例に挙げると、1羽で育てるより集団で育てるほうが餌をたくさん食べて成長が早い。人も、誰かと一緒にごはんを食べるほうがいつもよりたくさんの量を食べるということがわかっています。その人との関係性が親密であればあるほど、食の社会的促進の影響は大きくなります。
確かに、大切な友達や家族と一緒に食べるほうがたくさん食べるかも!それに、おいしく感じられる気がします。
そう、不思議だよね。しかし人と一緒に食べても、1人で食べても本来の味覚はまったく変化はありません。じゃあ、なぜ人と食べるとおいしく感じるのか?それはおいしさというのは主観的なものだからです。
主観的なもの……?
私たちの実験で、1人でごはんを食べる時に、目の前に鏡をおいて食べるほうが誰かと食べている感覚になってたくさん食べられるという結果が出ました。また、誰もいなくてもテレビやラジオから流れる人の話し声を聞きながら食べるほうがおいしく感じられるというデータもある。
鏡を置いて食べる?!想像もつかなかったです!じゃあ、好きな音楽を聞きながらでもおいしく感じるのですか?
いや、音楽ではその効果が得られないのですよ。やはり人の声でないとだめなんだね。飲食店に入って1人でごはんを食べる時も周りの人の話し声でおいしく感じられることがあるし、私の子どもも、給食はコロナ禍の黙食より、今のようにみんなで食べるほうがおいしいといっていますよ。
大切な人と一緒に食べることで幸福度が高まり、心身ともに健康に
じゃあ最近よく耳にする「孤食」も、工夫して食べればいつもよりおいしく感じられるということですか?
そうなんだけど、1人だとどうしても好きなものばかり食べてしまい、野菜や果物の摂取量も減って肥満になりやすいから孤食は体にあまりよくないのです。孤食の子どもはBMI値が高いけれど、子どもの話をよく聞く親のもとで育った子はBMI値が低いというデータもあります。
また、家族と一緒にごはんを食べる人ほど幸福度は高い。アメリカの研究では、週のほとんどを家族で一緒に食べる親子ほど関係性がよく、親が子どものことをよく理解しているので学業にもいい影響を与え、ストレスレベルも低いことがわかっています。
こうした結果を受けて、ブリティッシュ・コロンビア大学では学生に対し、友人や大切な人と一緒に食事することを推奨しています。誰かと食べることで健康な食事習慣ができ、人間関係がよくなり、学業成績がよくなり、麻薬使用のリスクも減ると掲げている。1人で食べることが多いとどうしてもタバコや麻薬に手を出してしまう、という学生もいるからね。
アメリカでは孤食に対していろいろな研究や対策が行われているんですね。日本はどうでしょうか?
日本では高齢者の孤食が問題になっています。1人で食事をするとうつになりやすく、栄養の摂取も不足する。また過食症になる人もいます。やはり、誰かと話ながら食べることや、1人でも人の声を感じながら食べることが大切ですね。
ちなみに、孤食は電子レンジの普及とともに増えているんですよ。それまで冷たいものしか食べられなかったけれど、レンジでチンすれば1人でも温かいものが食べられるからね。産業の発展で、暮らすところと働くところが分かれたことも関係があります。昔は仕事場と家が近い、あるいは同じということが多かったから、昼も夜も家でごはんが食べられた。でも家と仕事場が離れていると、それだけ家族と時間が合わなくなる。だから昔より孤食が増えたとも考えられています。
なるほど。でも、どれだけ温かい食事でも、大切な人や家族と食べるほうがやっぱりおいしいですよね。
そうですね。最初に話したように、人は太古の昔から1人で食べることに慣れていないから、どれだけおいしい食事でも1人で食べるとそれほどおいしく感じないかもしれないですね。
昔の日本のように、お茶の間で家族全員が揃ってごはんを食べること。それが理想ですね。
実際に、家族や友達のように大切な人と会話しながら食べるごはんは楽しいしおいしいし、明日へのパワーにもつながる気がします!
先生、ありがとうございました!
こんにちは。今日は、人はなぜ大切な人とごはんを食べるとおいしく感じるのかについてお話を聞きに来ました。そもそも、人はいつからみんなでごはんを食べるようになったんですか?