読みもの

お米を活用したバイオマスプラスチック「ライスレジン」が、コメ問題解決の一つの方法になる?


Warning: Undefined variable $post_id in /home/skybabies/soramido.com/public_html/onakaippai.soramido.com/wp-content/themes/gohan/single-magazine.php on line 10

    Warning: Attempt to read property "name" on bool in /home/skybabies/soramido.com/public_html/onakaippai.soramido.com/wp-content/themes/gohan/single-magazine.php on line 16

お米を原料に使ったプラスチックがあるのを知っていますか?

「バイオマスプラスチック」は生物由来の原料を使ったプラスチックで、焼却しても通常のプラスチックに比べ大気中のCO2濃度の上昇が少なく、石油由来のものと違って環境にやさしい点が注目されています。

そしてお米を使ってできているプラスチック、それが「ライスレジン」です。

製造しているライスレジン社はお米をプラスチック原料とするだけではなく、ライスレジン用のお米「資源米」の生産を米農家と協力して行っています。

ソラミドごはんくんがライスレジン代表取締役COOの奥田真司さんに、ライスレジンの生まれた経緯や日本の米づくりに与える影響についてお話を伺ってきました。

株式会社ライスレジン

2017年に新潟県の南魚沼で、米を使ったプラスチックの製造販売事業として創業。食用に適さないコメを原料にするほか、ライスレジン作りの原料として「資源用」の米づくり行うといった活動を、行っていた。その後ビジネスを福島県の浪江に集約し、株式会社ライスレジンとなる。ライスレジン普及のために販売網を広げる一方、農家と提携して原料となる米づくりを進めている。
https://www.riceresin.co.jp/

ソラミドごはんくん

ごはんが大好き!
ちょっぴりヒツジに似たごはんの妖精。好奇心旺盛で、ごはんのことなら何でも知りたい!聞きたい!見てみたい!と思っている。

余っていたり捨てられたりするコメをプラスチックの原料に

ごはんくん

お米からプラスチックができると聞いて、とっても興味を持ちました。ライスレジンは、いつ、どうして生まれたんですか?

奥田さん

プラスチックに米を混ぜてバイオマスプラスチックを作るという技術自体は、20年以上前に京都大学で開発されていたそうです。お米だけではなく、木の端材など、ほかの生物由来の素材でもバイオマスプラスチックの研究はされていたんですが、当時はビジネスとして形になる状況ではなかったようです。その後環境に対する意識が高まり、2017年に我々の元となる会社の創業者がこの技術に着目して開発をおこない、ビジネスとしてライスレジンの製造を開始しました。

ごはんくん

世の中全体で環境への意識が高まったことで、ライスレジンが生まれたんですね。いったい、どんなお米が材料に使われているんですか?

奥田さん

いくつかあります。食用のお米を精製していく過程においては、欠けたり割れたりする、いわゆる「くず米」「砕米」といったものが発生します。一部は味噌や醤油などの加工用や、飼料用に使われますが、どうしても使いきれないお米も出てきます。また、市場で販売しているものでも売れ残って何年も経ってしまうと、加工用にもできず行き場を失い、処分されているお米もあります。あるいは、大規模な水害で倉庫が浸水し、どの用途にも使えなくなってしまったお米なんかも突発的に発生したりします。

実は、見えないところで使われないまま処分されてしまっているお米って、たくさんあるんですよ。我々はそうしたものを買い取って原料にするところからはじめました。

ごはんくん

世の中には、使いきれなくなってしまったお米がそんなに存在しているんですね。それはすごくもったいないし、ライスレジンさんのようなビジネスで活用できるってすごくサステナブルで、今の時代にピッタリですね!

奥田さん

農家さんなどから集めたり、そういうコメを扱う業者さんから購入していましたが、現在はそれに加えて国の備蓄米のうち、期限が切れたものを原料用途で提供していただけるようにもなりました。これで安定的に原材料を確保できる状況になっています。

ライスレジン用に「資源米」としての米づくりも行っている

ごはんくん

ライスレジンさんでは、「資源米」というものをつくっているとも聞きました。聞いたことがない名前です。

奥田さん

「資源米」とは、私たちが独自につけた名前なんですが、要は最初から食用ではなく、我々のライスレジンの原料として、栽培してもらったお米のことを指します。

ごはんくん

ライスレジンのためにお米作りをしているということですか? どうして、資源米を作るようになったんでしょう?

奥田さん

最近は、休耕田や耕作放棄地が増えて問題になったりしていますよね。そういう農地の有効活用を考えて、以前は自社のグループで農地を借りて、自前で米作りをしていました。

また、我々の会社がある福島の浪江では、東日本大震災の後、全町民が避難して人口がゼロになってしまいました。農地に関しても10年間、ずっと荒れ地のままだったんです。今は少しずつ町民が戻り、農家さんも戻ってきてはいるのですが、農業の再開はなかなか進んでいかない状況にありました。

ごはんくん

そういった農家さんたちが、資源米をつくってくれているということですか?

奥田さん

そうです。10年ぐらい作っていない田んぼなので、土壌が変化してしまっていたりで、元どおりのおいしいお米を作れるようになるまでには時間がかかります。でも我々のライスレジンの原料にするお米は食べるわけではないので、特別おいしくなくても、品質に少しバラつきがあっても大丈夫です。

今すぐおいしいお米を作れない可能性があるのだったら、まずは我々がそのお米を材料として買い取るので、とりあえずお米作りを再開しませんか、ということで「資源用」の米づくりがはじまりました。

ごはんくん

そうすることで農家さんも助かるし、ライスレジンさんも原料が安定して手に入るようになるというわけですね!

奥田さん

農家さんからは「安心しました」「良かった」と言っていただきました。我々としても安定して原料を確保するための一つの手段となっています。

我々は、製造業として安定した原料調達をするために資源米の生産に力を入れていますが、もうひとつ、大きな想いを持っています。それは、お米を作る文化を大事にしたいということ。私たちは、日本のお米の文化を大切にしながら、それを使ったものづくりをさせていただいています。これからも日本国内で、自給自足でコメを供給していくという体制を維持するためにも、我々も事業でしっかり貢献をしたいと思っているんです。

食用の用途以外にも、柔軟にお米を活用することで、日本のコメ作りを守っていく

ごはんくん

ライスレジンさんとしては、日本の今の米作りにどんな危機感をお持ちですか?

奥田さん

生産者さんやJAさんなどとお話をさせていただくと、やはり皆さんお米の消費が減っていることについて課題意識を持たれています。

生産者さん自体も高齢化によって減り、今の作付面積をこのまま維持していけるかどうかもわかりません。そこで今までだったら、じゃあどうにかして食用のコメの消費を増やそう、という取り組みを考えていたと思うんです。でも、これから人口も減って、食文化もきっとさらに変わってきていますから、ただ増やすにしても限界があるんじゃないかと私は想像しています。

ごはんくん

もちろんたくさんごはんを食べてもらいたけど、日本の人口が減っていくのは確実なので、単純に考えるとそうなりますね。

奥田さん

だから食用でもないし、飼料用でもない、我々の資源用という用途は、日本の米作りを維持するための一つの方法だと思っています。

もちろんライスレジンだけで解決する問題ではないですが、食用以外の新たな用途にお米を使うことができるということを認識していただいて、生産や使用が増えていけば、全体としてのお米の消費にもつながっていくのでは、と思うのです。

ごはんくん

食べることばかり考えていたけれど、それ以外でも使っていいんだよ、という視点は欠けていたかもしれません。

奥田さん

我々が使うコメはおいしさを追求しなくてもいいので、こちらからお願いしているのは、収量の多い品種をつくって欲しいということだけです。そのため、栽培時のコストや手間を減らしてもらうことができると思います。

例えば、おいしい米づくりを追求していく中で、余力があれば使われていない田んぼを資源米用にしてもらうとか、田んぼの一部のみ資源米を作るという方法もあります。食用米と資源米をつくる時期をずらして、繁忙期を分散したり…なんてことで、農家さんに無理なくコメの生産量を増やしてくもらうことも可能かもしれません。

ごはんくん

お米作りって手間暇かかるけれど、品質や味をそこまで気にしなくていいなら、食用に加えて工業用で作付面積を増やしていいかも、と思う農家さんもいるかも。それなら、作付面積を維持できるかもしれないですね。

奥田さん

買い取り価格は食用よりは安くなるのですが、その分コストを減らしたり、一部補助金を活用してもらったりすることで、トータルでは食用とは遜色がない収入になったという事例もできています。もちろん、「そろそろ工業用から食用に転換します」となってもらってもOKです。

消費者が意識することで。世の中の動きを変えていくのが理想

ごはんくん

そうした中で、ぼくたち一般の消費者ができる事ってありますか?

奥田さん

意識を少しずつ変えていただけると、世の中も変わっていくのかなと思います。

ライスレジンを使用した製品は、価格面ではまだまだ少し高価です。我々としては既存のプラスチック製品に近い価格になるよう努力しているところですが、消費者のみなさんには将来のためや環境のためと考えて、今から少しずつ手にとっていただいたり、気にしてもらえるととてもありがたいです。とくにライスレジン製の食器なんかは、国産のお米でできているので安心安全ですし、お子さんの食育にもいいんじゃないでしょうか。

今後はさらに、農業や食といった分野で使われるプラスチック製品分野に、どんどん置きかわっていくような取り組みをしていきたいと思っています。米袋自体をライスレジンで作れたらいいなとも考えているところなんです。

ごはんくん

お米でできた袋にお米が入っているっていいかも!今現在では、ぼくらはライスレジンさんの商品をどういうところで見ることができますか?

奥田さん

見かけやすいものでいうと、あるファストフード店の持ち帰り用カトラリーに採用していただいていたり、あとはレジ袋として活用されているケースもありますし、ホテルのアメニティの歯ブラシやクシも、導入いただいているところが増えてきています。ライスレジンの商品には米粒のようなマークがついているので、ぜひ注目してみてください。

ごはんくん

ライスレジンの普及が進むことで、世の中の環境はもちろん、米作りが少しでも良い方向にいくことを願っています。

奥田さん

私たちも企業努力を精一杯していきますが、同時に消費者の皆さんの意識が変わっていくことで、世の中の方向性は大きく変わると思います。ですからお米を食べていただくことはもちろんそうですが、ライスレジン製のアイテムを見つけたらぜひ積極的に使っていただきたいです。そして私たちは製造業の立場から、日本の米づくりや環境を守るために、発信を続けていけたらと思います。

ごはんくん

ライスレジン製のプラスチックをたくさん目にするようになれば、お米がたくさん作られているんだなあと実感できそうです。奥田さん、ありがとうございました!

こちらの記事にも、お米の未来のために私たちができることについて書かれています。