のぞき見お昼ごはん│「食事は人を作るものだから、愛情込めて大切に料理したい」訪問調理師ごはんさん
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「ごはん」に関わる活動をされている方の普段のお昼ごはんにお邪魔しながら、その人のパーソナルな部分をのぞき見る連載企画「のぞき見お昼ごはん」。
初回は、ソラミドごはんのレシピ監修でもおなじみの訪問調理師・ごはんさんにお話を伺いました。
家庭を訪問して料理をつくったり、メディアでレシピを監修したりと、「予約のとれない訪問調理師」として大人気のごはんさん。料理に携わる仕事をするようになってから、2024年で10年目を迎えるそうです。
そんなごはんさんは、プライベートではどのような食事をしているのでしょうか。そして、どんな経緯で、どんな想いで、いまのお仕事をするようになったのでしょうか。ごはんさんのお昼ごはんにお邪魔し、活動の軌跡をたどらせてもらいました。
ごはん さん
訪問調理師/子ども料理研究家。
累計1,500件以上のお宅を訪問し、各家庭の味に寄り添った簡単で身体に優しい料理を提案している。著書『数カ月先まで予約でいっぱい! 訪問調理師ごはんさんのどんどんおかわりする子ども大好きレシピ78』『訪問調理師ごはんさんの野菜大好きレシピ』等。Instagram: https://www.instagram.com/gohan.no.gohan/
ごはんさんの「お昼ごはん」はどんなごはん?
<この日のメニュー>
・ロールキャベツ
・紫キャベツのコールスロー 〜クリームチーズ添え〜
・さつまいもごはん
彩り豊かなワンプレートごはん。
なんとこの日は、ごはんさんが取材メンバーにも同じメニューのお昼ごはんを振る舞ってくださいました!
ていねいに包まれたロールキャベツは、中からじゅわっと肉汁が溢れて心も体も温まります。
紫キャベツのコールスローはシャキシャキ食感が楽しくて、クリームチーズと一緒に食べるとまろやかでほっぺたがとろけ落ちちゃう。
さつまいもごはんは塩だけのシンプルな味付けがお芋のやさしい甘みを引き立ててくれます。
──きょうのお昼ごはんはなぜ、このメニューにしたんですか?
──ほくほくのさつまいもの炊き込みご飯、秋らしさ全開でいいですね!
やっぱり、お米が大好きなんですよね。
この夏、スーパーからお米が無くなったときがあったでしょう? 新米がお店に並ぶ時期になって、ようやくお米が手に入るようになったのがうれしくて! やっぱり、お米があると安心するなぁ。
──お米は生活になくてはならない大切な存在ですよね。
メインのロールキャベツも、寒くなってきた季節にぴったりでいいですね!
ご近所さんからもらったキャベツをいっぱい使いたくて、ロールキャベツにしました。
──えっ! 近所の方からキャベツをもらったんですか! 都市部で暮らしているとご近所さんとお裾分けし合う機会ってなかなか無さそうですが、どうやって仲良くなったんですか?
なんでだろう……何度か顔を合わせて、挨拶をしたり、ちょっとした立ち話をしているうちに自然と(笑)。気づけばお裾分け仲間になっていて、今ではよく家にごはんも食べに来てくれるんですよ。
──ご近所さんと気づけばそこまで仲良くなってしまうなんて。ごはんさんの人柄が表れるエピソードですね!
──きょうはすてきなワンプレートごはんをごちそうになりましたが、実は普段はあまりお昼ごはんを食べないと伺いました。
そうなの、基本的に仕事で外出していることが多くて。訪問調理で1日に何軒もお宅をまわったりするので、時間にゆとりをもって移動をしたいから、あまりお昼ごはんを食べないんです。そのぶん、朝ごはんにはすごく大きなおにぎりを、もりもり食べています! 全形海苔にごはんもおかずも全部乗せて、パタパタと折りたたむだけで完成するからとっても簡単。あとは、どんぶりでお味噌汁も飲みますね。
──大きなおにぎりも、今度ぜひ見せてもらいたいです! きょうみたいにお昼ごはんを食べるのは、お休みの日などが多いんでしょうか?
そうそう。家にいるときは、きょうみたいにワンプレートごはんにすることが多いかなぁ。
──手軽においしく食べられるワンプレートごはん、いいですね!
私がはじめて料理を仕事にしたのが、会社で社員のみなさんに食事をつくること。その会社ではみんなで一緒にごはんを食べる習慣があって、人数も多いから、食べやすくて洗い物も少なくて済むワンプレートごはんにするの定番だったの。
その名残で、私も自然とワンプレートごはんを食べるようになりました。ワンプレートごはんって、自分が好きなものをあれこれ乗せて、パパっと食べられるのがいいんだよね! ワンプレートごはん、最高〜!
ごはんを作る仕事との出合いは、偶然だった
──ごはんさんは、いつから『ごはんさん』として活動されているのですか?
『ごはんさん』は、さっきお話した社員食堂時代のボスがつけてくれたあだ名なの。その会社ではメンバー同士を苗字じゃなくてあだ名で呼ぶ文化があって。
私の名字に「飯」の字が使われているのもあって、「ごはんちゃんでいいんじゃない? はい、決まり!」って。
それから、その会社以外でも『ごはんさん』や『ごはんちゃん』って呼ばれるようになりました。名付けてもらった当時は、『ごはんさん』名義で書籍を出すことまでは想像もしてなかったなぁ……(笑)
──今では、訪問調理のお仕事に加えて、本を出されたり、いろいろなメディアでレシピ監修をされたりと、本当に幅広い活動をされていますもんね。ごはんさんは、子どもの頃から料理の仕事をするのが夢だったんですか?
それが、そういうわけではなかったんですよ。両親が共働きだったのもあって、一緒に住んでいたおばあちゃんから教わりながら料理を作る機会は日常的にあったけど、仕事にしようとは全然考えてませんでした。
──子どもの頃から料理の仕事をしようと決めていた訳ではなかったんですね。では、料理の仕事を始めたきっかけは何でしたか?
大学は国際学部に入学して、その後は国際協力や教育系のNPOやNGOに就職して、海外で働けたらいいなぁ、なんて考えていたんです。でも、就職活動中に東日本大震災が起きたことで、みんなが大変な中、とにかくどこでもいいので就職しようと。大幅に路線変更して何とか見つかった就職先が、スーパーマーケットでした。
スーパーでの仕事は大変なこともあったけど、流通の裏側を経験できたことは今の仕事にもとても役立っています。生活に身近な場所で働けたことで、毎日の食事の大切さを目の当たりにして……。改めて、家庭料理を学びたいと思うようになったんだ。それで転職を決意して、ある会社の調理インターンとして、社員のみなさんにごはんを作る仕事をすることになりました。
──先ほどもお話にあがった、「ごはんさん」誕生のきっかけとなるお仕事ですね。
本当に、出合いは偶然だったなぁ。スーパーマーケット時代に取っていた調理師免許も活かせる、ということでチャレンジしてみることにしたんです。
それで実際にやってみたらものすごく楽しくて。これは自分の天職だ! と思えるまでになったから、とても運がよかったと思います。
愛情を持って食事を作ることの大切さに気づいて
──料理を作る仕事が天職だと思えた理由は何ですか?
これだ! と思えたひとつの大きなきっかけになったのが、調理インターン時代のボスから『食事を作るときは、大切な人の内臓を触るような感覚で、とにかく丁寧に扱いなさい』という言葉をもらったこと。愛情を持って丁寧に食事を作ることの大切さに気付かされて、ハッとしました。食事は人を作るものだから、本来そうやって大切に作るべきだし、気持ちを込めて作られたごはんは、間違いなくおいしい。
──それは印象深いお話ですね。
それまではとにかく忙しくて、余裕が無くて。でも、ボスの話を聞いたときに、もしかしたら自分はいままでこうやって食事と向き合いたかったのかもしれないって気づいたんだ。
当時は心からやりたいと思えることが見つかっていなかったけれど、ボスの言葉がきっかけで、料理の仕事で生きていきたいと思えるようになりました。自分が愛情を持って食事を作ることで周りの人を癒せると知って、これがわたしの天職だと思えるようになったの。そこからは、もうとにかく料理の経験を積みたくて、小学校の給食調理員をやったり、飲食店で修行させてもらったり、ケータリングをしてみたり。その中でご縁があって、訪問調理の仕事をさせてもらうようになりました。
──偶然出合った料理の仕事が天職になったのは素敵ですね!
自分を大切にできる食事を届けたい
──ごはんさんは料理をするのはもちろん、食べるのもお好きだと聞きました。
食べるの、大好き! でも特別グルメっていう訳ではなくて、有名なレストランじゃなくても良いんです。もちろん、そういうお店も素敵なんだけど……。
私は、誰かと一緒に食卓を囲むのが大好きなんですよね。よく、今日みたいに家に人を呼んでみんなでごはんを食べることもあるし、プライベートでも家庭にお邪魔してそのおうちの方とごはんを作らせてもらって、みんなで一緒に食べることもあります。みんなで集まれば、たくさん料理を作ることができるし、いろんな種類の味を少しずつ楽しむことができるでしょう? 一人だとあれこれ作っても余らせちゃうから。とにかく食への好奇心が強いから、いろんな味をちょこちょこ食べたくて(笑)。
──みんなで食卓を囲むって、幸せなことですよね! 最後に、毎日たくさんの人の食卓を支えているごはんさんが考える「食事の大切さ」について、ぜひ聞かせてください。
食事を大切にするというと、“3食きちんと、栄養バランスを意識して食べること”にフォーカスされがちだけど……。ぜひ、『自分が食べたいものがわかる』状態を大切にしてほしいと思っています。忙しい日々のなかで食事をとるのは、大変なこと。お腹を満たすためだけの行為になってしまうことも、きっとありますよね。それでも『あれが食べたい』という心の声が聞こえたら、少しでも正直に寄り添える心と身体でいてほしいと思います。
──『自分が食べたいものがわかる』……?
自分が食べたいものを食べているときって、幸せだなぁ、おいしいなぁって心が安らぎますよね。安心したり、優しい気持ちになったり。そういう瞬間が日々の中で増えていくって、ものすごく豊かなことだと思っていて。結果的に、その食事がいまの自分にとっていちばん必要な栄養素であり、感覚であり、時間になるんじゃないかな、と。
本当に食べたい! と感じたときに食べるものは、たとえジャンキーなものでも罪悪感を持つ必要はないと思っています。ただ自分を傷つけるように乱暴に食事をとる時間は、できる限り減らしたいですね。
とはいえ、やっぱりどうしても毎日忙しくて、食事を考えたり用意したりするのが難しい人も多いですよね。その大変さはよく分かる……。そんなときは誰かに頼ったり、自分を楽にする方法を探していいと思います。誰かに頼ってもらえることで、私のように頑張れている人もたくさんいると思うから。持ちつ持たれつ、大変なときはみんなで助け合って、できることを持ち寄っていけたら、社会の『うれしい!』ももっと増えるはずだから!
──家族や身近な人に頼ったり、便利な調理キットや宅配サービスを活用してみたり。そして、ごはんさんのような訪問調理師さんにサポートをお願いしたり。みんなが、それぞれに合った方法で、普段の食事を無理なく大切にできるといいですね。
どんな食事でも、食べることで心が喜べば、きっと栄養になる。結論、『楽しく食べる』がいちばんです! 毎日忙しくて、ずっとハッピーではいられずとも、1日1食でも、間食だけでも、自分自身の心が満たされるごはんを食べることが、私にとって自分を大切にすることでもあり、周りの人を大切にすることでもあると思っています!
編集後記
今回の取材はごはんさんのご自宅にお邪魔して、一緒に食事をいただきながら行いました。ごはんさんは一目お会いしただけでファンになってしまう温かい人柄で、食事についても「冷めてないかな?」「おかわりもあるよ」と気にかけてくださいました。
明確にやりたいことが無かった時代から料理をする仕事に偶然出合うまで、悩みながらも歩みを止めずに進んできたからこそ天職に就けたのはとても素敵だなぁと思います。
こんなに食事を大切にしているごはんさんだからこそ、訪問調理の仕事にも心を注いで、信頼を得ているんだろうなぁ。
これからもソラミドごはんではごはんさん監修のレシピ記事が登場するので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。
さいきん寒くなってきたから※、秋らしいメニューがいいなと思って! 秋といえばさつまいもの季節だから、炊き込みごはんにしました。※取材は10月上旬